開創250年記念 本堂・伽藍 落慶ごあいさつ

妙定院全景
 土蔵のみ残して、妙定院のすべてを焼き尽くしてしまった東京大空襲。その後まもなく再建が始まり、ようやく本堂まで完成したのも束の間、昭和三十年代末には境内背面に首都高速道路、前面に都道の築造となり、そのため境内の形は不整形となり、振動・騒音・大気汚染、更には日影などの環境の激変が当院を襲いました。一時は、この地での寺院の存続さえ危倶されたこともありました。先代といかにすべきか、よく話したものでした。境内形状の大きな変化のための対処なら、全面的な改築しか選択肢がなかったことも、計画になかなか乗り出せない一因でした。
 しかし、いつまでも振動などで建物を危険にしてはおけません。高層ビル化や地下鉄の開通など、周囲の状況もひとまず落ち着いてきたようでもありました。そこで、この開創の聖地で、伝統と将来を見据えた伽藍を整備すべく発願することとしました。いわば徳川幕府の寺であった当院が明治期に入った時に新時代を見通した第九世や、大戦後、無同然から始めた第十三世のことを思うと、勇猛心が湧きました。総代はじめ檀信徒の方々もこぞって賛同し、大きな支援をくださいました。境内地型の変貌から四十年。ここにようやく円成に至ったのです。
 本堂は、木造檜造り。寄棟造りの形や増上寺を向く方向も、焼失までの百七十五年間の姿と同様に戻りました。伝統の匠の技に、耐震をはじめとする最先端技術が加わっています。環境にやさしく、人々に潤いと安らぎを供する檜の香りも清しい道場です。堂内荘厳も伝統と洗練の力作ばかりです。国の登録有形文化財の土蔵二棟は、古文書を基に二百年前の姿に戻り、現代の風景に融け合っています。
 書院は、法然上人像をいただく汎用の空間を有し、文人でもあった開山妙誉定月大僧正の流れを引き現代の作庭家渾身の作である庭園を見渡す洋室や和室、更には、江戸城から伝わったものを中心とする什宝物を収蔵する近代設備の収蔵庫や一切経を蔵する経蔵から成る近代建築です。現代の高い水準のデザインの息吹も感じられます。山門をくぐっての本堂前の停まいも凛としています。
 悪環境には強く、地球環境・周囲・人々にはやさしく、開かれた寺院をめざす・・・という基本理念のもと、すべての方々の尊い力によってこの落慶を迎えることができました。心より感謝申し上げます。
 器はできました。これからは恩返しをすべき時となります。仏教に期待されるところは多いものがあります。法然上人八百年大遠忌を迎える今、宗祖の万民救済・専修念仏の教えを根幹として、文化的な役割や地域・社会に対する貢献を多少なりとも担い、人々がほっとする時間、ちょっと日々の生き方を振り返る瞬間を提供できたら、こんなに有り難いことはないと思います。
妙定院住職 小林正道 

本尊・須弥檀
本尊・

法然堂
法然堂
月影園
月影園
本堂・熊野堂・山門と東京タワー
本堂・熊野堂・山門と東京タワー


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